放射性物質って何?-意味と活用方法・問題とは

放射性物質とはどんなものか

テレビや新聞などで放射性物質とか放射線、放射能などという言葉を聞くことがあります。

これらの言葉を聞くと何となく危険な感じがしますが、正しい意味をきちんと理解している方は多くないかもしれません。

最初に放射線とは何なのかを理解しておくようにしましょう。

放射線とは、紫外線よりも波長が短い光(電磁波)であるエックス線やガンマ線、原子の材料である素粒子(電子・陽子・中性子・原子核など)が空間中を高速で移動することで発生する粒子線などを指します。

放射線はモノではなくてエネルギーと考えることができ、物質に当たると透過したりエネルギーが吸収されて熱や他の種類の放射線に変化して放射します。

もしも人間や動物・植物に強い放射線が当たると、遺伝情報が記録されているDNAが切れてしまうことで細胞に大きなダメージを受けてしまいます。

エックス線や電子線であれば電気を使用して人工的に作り出すことができますが、放射線の多くは特定の物質(原子)から放出されます。

ある特定の原子が放射線を放出すると原子核に含まれる陽子の数が増加または減少して、別の種類の原子に変化します。

例えば身近な物であれば炭素原子があります。

中学校の理科の教科書には、炭素原子の原子核は陽子と中性子がそれぞれ6個ずつ(合計12個)の素粒子から出来ていると書かれてあります。

ところが中には陽子が6個で中性子が8個含まれている炭素14と呼ばれるものが僅かに含まれています。

この炭素14の原子核に含まれている中性子のうち1個が、1個の電子を放出して1個の陽子に変化することで窒素(陽子と中性子がそれぞれ7個)なります。

放出された電子は高速で空間に飛び出して、ベータ線と呼ばれる放射線を発生します。

このように放射線を発生させる物質のことを放射性物質と呼び、炭素以外にも多くの種類の原子が別の種類の原子に変化することがあります。

放射性物質は自然界にも存在し、人工的に原子に作り出すこともできる

放射性物質は自然界にも存在しますし、人工的に原子に作り出すこともできます。

例えば医療用や工業用にガンマ線源として利用されるコバルト60という物質は、放射線を放出しないコバルト59に中性子線を照射して人工的に作り出されています。

原子核の種類が変化する時に発生する放射線は電子線だけでなく、中性子線やエックス線・ガンマ線などである場合もあります。

原子の種類によっては原子核の種類が変化する時に熱が一緒に放出するケースがあり、崩壊熱などと呼ばれます。

原子力発電や原子爆弾は、物質が放射線を放出しながら別の原子に変化する際に放出される熱エネルギーを応用したものです。

2011年の大震災の津波で起こった原発事故においても放射性物質においてのニュースがたくさん流れていましたが、今は全く報道されていませんが、福島原発では現在でもアトックスなどのたくさんの企業が除染作業や廃炉に向けた作業を行なっています。(参照・・・アトックス本社

原子力発電所や広島に投下された原子爆弾は、天然に産出されるウラン235(陽子92個+中性子143個)の原子核が分裂して別の原子に変化する際に発生する大きなエネルギーを利用したものです。

ウラン235は何もしなくても自然に2~3個の中性子を放出して原子核が分裂して他の種類の原子に変化する性質(核分裂)を持っています。

ウラン235に中性子を照射すると原子核の分裂が促進され、短時間で核分裂をさせることで大きな熱エネルギーを取り出すことができます。

核分裂をさせた際に発生した熱エネルギーを利用してお湯を沸かして出来た水蒸気で発電機を動かせば、発電をすることができます。

放射線というのは、種類や量によっては人体に害を及ぼさない場合もある

一般的に放射線と聞くと危険というイメージを抱く方が多いのですが、種類や量によっては人体にほとんど害を及ぼさないような場合もあります。

例えば天然にも存在する水素3(トリチウム)と呼ばれる物質の原子核は陽子1個と中性子2個で構成されていて、1個の中性子が1個の陽子に変化する時に電子線を放出します。

この時に発生する電子線のエネルギーは非常に弱く、薄いアクリル板でも簡単に遮蔽することができるほどです。

トリチウムから発生する電子線が蛍光物質に当たると可視光線に変化して、発光させることができます。

トリチウムを含む水蒸気を内側に蛍光物質が塗布されたガラス管に封入しておくと10年以上も自然に発光させ続けることができ、暗闇の中でも針や文字盤が見える時計などに利用されています。

放射性物質が他の種類の原子に変化する速さは物質ごとに違いがある

放射性物質が他の種類の原子に変化する(崩壊と呼びます)速さは物質ごとに違いがあります。

原子が崩壊する速さの尺度として、半分の量の放射性物質が変化するのに要する期間(半減期)が用いられます。

例えば炭素14のうち半分が窒素に変化するのにかかる時間は約5,730年です。

トリチウムの半減期は約12年なので、12年間放置すれば量が半分になります。

時間が経過すると数が減少するので、発生する放射線も弱くなります。

原子力発電の際にウラン235の原子核が分裂すると別の種類の原子になりますが、新たに生じた原子も放射線を発生する性質を持ちます。

最終的に安定した物質に変化するまでに数万年以上の長い年月が必要で、この間は危険な放射線を放出し続けることから廃棄物処理が大きな問題となっています。

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