薬事法から薬機法へ

昭和35年に巷に流通している粗悪な医薬品や医療用具を規制するために施行されたのが薬事法でした。

規制当局が認めたもののみを流通できるようにしたことで一定の品質が保たれ、安全に医療に供することができるようになりました。

規制は製品に対する側面と業者に対する側面とがあり、両方を規制することで流通前も流通後も品質、有効性、安全性が確保されている状態を維持します。

それから何度か改正を繰り返しながら長きにわたって医薬品、化粧品や医療機器を規制してきました。

直近の改正は平成26年11月25日に行われました。

いままで医薬品と医療機器を一緒に規制してきましたが、この改正により章立て変えてそれぞれの規制として独立させました。

また、新たに再生医療等製品も加わり現在の医療の実情にあう規制として生まれ変わりました。

同時に名称も「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に改称されました。

いままでの薬事法と比べるとあまりにも長い名称になったため、「医薬品医療機器法」などの呼称が考えられましたが最終的には「薬機法」と従来の呼び方に近い状態に落ち着いてきました。

ただし、「薬機法」と公的に定めたものがあるわけではないので薬機法の正式名称は長いままです。

変更になった点は名称だけではありません。

全体的に国際整合を基本として諸外国との規制と調和を取り、製品が市場投入されるまでの期間を短縮することで、遅延を減らし、より早い段階で使いたい患者へ適用できるように改正されたものです。薬事法 広告

特に海外で使われている有効な医薬品や医療機器が日本では使えないとの現場の不満があるため、それに配慮する形となりました。

大きな変更としては、医薬品と医療機器が分かれたことにより、医療機器の規制がより特徴に合わせたものになったということです。

医療機関などの現場で医療機器が医薬品と違う点はいくつもありましたが、医薬品の規制の中に無理やり収めて運用していました。

例えば、医薬品は一度投薬されればそれで終わりますが、医療機器は使い捨てのものを除いて数年間使用され続きます。

よって、医薬品には重要な有効期間が医療機器では長期間になり根拠も曖昧になります。

一度市場で使われた医療機器は、保守管理や修理を行うことで使い続けることができます。

また、ある所有者が使っていたものを他の所有者に移譲する中古という考え方も存在します。

そのように長期にわたって使用することで培われる経験によって、いろいろな改善要望が集まります。

それによりメーカーはさらなる開発を行い、よりよい医療機器を市場に投入し、医療に役立てようとします。

あらたに開発された機能は、場合によっては既存のモデルに適用可能なものもあります。

医薬品は一度流通したものを良くする行為はないため、医療機器特有の問題になります。

この改正によって、変更に対する許認可を済ませれば使用している医療機関でのアップグレードが可能になりました。

医療機関は買い換えることなく新たな有効で安全な医療機器を使うことができます。

患者のQOL(生活の質)を上げるためにより良いものを早く市場に投入できるようになった改正です。

その他にプログラムも医療機器として扱われるようになりました。

今まではハードウェアの一部として扱われてきましたが、時代の流れにより汎用PCやタブレットなどに入れることで医療に供することができるプログラムが登場してきました。

規制がないことで流通できなかったこのような製品を市場に投入するために医療機器プログラムとして位置付けられました。

治療用や診断用、予防用と言った目的で使われるインストール可能なプログラムが対象です。

これらのプログラムを流通させるには行政等の許認可が必要になります。

このように許可制にすることで粗悪なプログラムが流通しないように監視することができるようになりました。

医療機器と同様に別に章立てがされたのが再生医療等製品です。

再生医療等製品とは再生医療等製品は、身体の構造や機能が失われてしまった時に再建、修復、形成するためまたは疾病の治療や予防を目的として使用するために人又は動物の細胞を培養して加工を施した製品のこと、または、遺伝子治療のために人の細胞に導入して使用する製品のことを言います。

改正前は医療機器の規制で対応するしかありませんでしたが、工場で作られる量産的な医療機器とは性状が異なるため不都合が生じていました。

特に個人の細胞を培養してオーダーメイドで作られる再生医療等製品は品質や有効性が本人に使われてからしばらくしてからしかわからないという問題がありました。

そこで非臨床試験で安全性を確認して、製品の製造方法や管理体制を監査し品質が確認できたものを承認する制度となりました。

その後、患者の状態を一定期間監視を行うことで再生医療等製品の品質、有効性、安全性の確保を行います。

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